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個展開催のお知らせ(デザイン学科 山口雅英)

研究室からこんにちは(デザイン学科)
 デザイン学科准教授、山口雅英です。
このたび個展を開催することとなりました。個展のタイトルは「正方の風景群 山口雅英–紙版画展」。この展覧会のポイントはふたつ。ひとつはこの展覧会に出品している作品は私が長年研究し考案した新しい紙版画技法による作品であること。もうひとつは正方(正方形)をモチーフとした作品であること。

1.紙版画
 以前にもこのブログで紹介しましたとおり、現在私は科学研究費助成を受け新しい紙版画技法の研究と体系化の研究に取り組んでいます。みなさんの中には小学校で紙版画を経験した方もいらっしゃるかと思います。紙版画は、一般的には幼児の造形遊び、小学校低学年の図画工作の教材として認識されています。その後は学年が進むにつれ版画では木版画等他の版種が教材として用いられるようになり、紙版画が必要とされなくなるため、紙版画の可能性が追求されることがなく、いわば未開拓のまま現在に至っていると言えます。まして紙版画により作品制作する作家は皆無です。しかし、誰も注目していなかっただけで、金属や木材、樹脂と比べ簡単に多様な加工ができる紙の特性を生かすことで幅広くまた高度な表現が可能となります。そのことを自身の作品によって実証していくことがこの個展のひとつの主眼となっています。

2.モチーフとしての正方(正方形)
 正方とは正方形のことですがあえて「正方」という言葉を使っています。辞書には「正方」の意味として「正方形」の他に「「正しいこと」と記載されています。私は、この「正しい」とは「正しい、間違い」の正しいではなく、正方形のように単純で整然とした規則性を持った状態と解釈しています。正方形は等しい角度と等しい長さの繰り返しという単純な規則によって生じた図形です。このような、正方形を正方形たらしてめている根本的な原理、抽象的な秩序を「正方」という言葉で表現しています。「正方」という原理、秩序が形となって現れたものが「正方形」だということです。観念としての正方形は肉体や個体差を持ちません。しかし例えばランダムにちぎった紙を正方形の形になるように折ると、ちぎることによってできた多様なラインがそれぞれの正方形の中にそれぞれ異なる造形を描き出します。それはまるで風景のようです。勿論ちぎっただけの状態の紙もそれぞれ独自な造形をしていますが、それらが正方形という共通の形に折り込まれた時、その形態の個性がより強調されてくるのです。抽象と具体、観念と実在のせめぎあいのうちに生まれた「風景」。ランダムにちぎった紙をただただ正方形に折り込む、そうしてできた造形を組み合わせ展開させていく、こうした単純なルール、単純な作業が相互に関連しあって複雑に発展し多様な造形を生成する。こうしてできた造形を「正方の風景群」と呼び、展覧会のタイトルとしました。

 ここに書いたようなことを理解しなければ作品が鑑賞できないというものではありません。花の咲く原理を知らなくても花を愛でることができます。その花をその花たらしめている原理は存在します。土壌や栄養、水、日光、さらに遺伝子だったり…それらがあなたの愛でているその花をその花たらしめています。しかし、花を愛でる時にはそんなものにいちいち意識することはないでしょう。作品の鑑賞もそれと同じです。知らなくても作品を楽しむことはできます。しかし、作者の思いを知り作品を味わうことによってまた違った面白さを感じたり、感じ方が深まったりするものです。もし私の作品をご覧いただく機会がありましたらそのようなことも念頭に鑑賞していただければと思います。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

■会 期
2019年4月13日(土)−4月27日(土)
午前11時〜午後6時まで(最終日午後5時まで)
休廊日 日・月(14日,15日,20日,21日)
■会 場
ギャラリーA・C・S
名古屋市中区栄1,13-4 みその大林ビル1F
■ホームページ
https://galleryacs.amebaownd.com/