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死刑存廃論(国際コミュニケーション学科 横瀬浩司)

研究室からこんにちは(短期大学)
死刑制度を存置すべきか、あるいは廃止すべきか、という死刑存廃論は、古くて新しい問題として議論されています。
死刑制度をこのまま存置すべきであるという考え方の理由の代表的なものとしては、以下のものがあります。①一般予防に基づく死刑存置論…死刑制度によって凶悪犯罪発生が抑制されるため。②特別予防に基づく死刑存置論…死刑によって犯罪者による再犯可能性を防止できるため。③世論支持に基づく死刑存置論…民主主義国家において大多数の国民が死刑制度を支持しているため。④被害者・遺族感情に基づく死刑存置論…被害者の無念、被害者遺族の感情を考えれば、死刑は存置すべきである。⑤代替刑未設置に基づく死刑存置論…死刑制度に代わる代替刑がないため。⑥司法制度問題に基づく死刑存置論…「仇討ち・私刑」、「裁判制度の軽視」等を防止するため。
これらの中で、死刑存置論の大きな根拠として、被害者の無念、被害者遺族の感情を考えれば、死刑は存置すべきであるという④被害者・遺族感情に基づく死刑存置論が挙げられます。
死刑制度を廃止すべきであるという考え方の理由の代表的なものとしては、以下のものがあります。①違憲性に基づく死刑廃止論…死刑制度は執行方法または制度自体が日本国憲法に違反しているため。②誤審・冤罪に基づく死刑廃止論…現在の捜査方法、裁判制度の中では完全に誤審や冤罪を避けることは不可能であり、死刑制度は回復困難な刑であるため。③刑罰一貫性に基づく死刑廃止論…死刑は懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の刑罰との一貫性がないため。④人権尊重に基づく死刑廃止論…基本的人権は最大限尊重されるべきであり、生命を剥奪する死刑は廃止すべきである。⑤国際的潮流に基づく死刑廃止論…死刑制度廃止は、国際的な潮流であるため。⑥刑務官問題に基づく死刑廃止論…死刑執行は刑務官に対して不当で大きな負担を与えるため。
これらの中で、死刑廃止論の大きな根拠として、現在の捜査方法、裁判制度の中では完全に誤審や冤罪を避けることは不可能であり、死刑制度は回復困難な刑であるためという②誤審・冤罪に基づく死刑廃止論が挙げられます。
東京大学法学部教授・最高裁判所判事などを歴任された団藤重光先生は、その著書『死刑廃止論』(1991年・有斐閣)の「はしがき」中で、「私は刑法学者として、理論的には以前から死刑に対して否定的な気持ちをもっていたが、それはまだ本物ではなかった。最高裁判所に入って、いよいよ自分が生身の被告人を裁かなければならない立場になってみて、愕然と事柄の重大性に心底から目覚めたのである。」と述べられています。そして、「いやしくも無実の者の処刑が許されてはならないのではないでしょうか。と言うことは、取りも直さず、死刑を廃止する以外にないということだと思うのです。」(同著52頁)として、死刑制度における誤判の問題点を述べられています。
一度、死刑存廃論について、じっくりと考えてみるものいいかもしれません。